お客様の声

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※個人の感想です。

「蝉の鳴き声が聞こえるよ」 長野市 T.S様

 

五・六年前から夫の耳が遠くなってきたことに気付いたが、年齢も75歳まだまだ老人にしては若い方だからと特に心配はしていなかった。

 

ところがこのことが日常生活の中で様々な問題を起こしてきたのである。

 

まずテレビを見ている時にボリュームをあげるので周りの者が迷惑をしてしまう。(しかしこのことは家族の者が我慢すればよいことである)

 

何より困ったのは妻である私の話が正常に伝わらないことが多くなった。「そんな話は聞いていない。」「ちゃんと話しました。」こんなことが度重なってきた。電話の対応も相手方の名前を誤ったり、内容が不明瞭だったりすることもあり、本人は電話に出なくなった。

 

この頃初めて「補聴器」の話が話題に上がった。私は一日も早く作って欲しいと思いそのことを再三夫に話したが、夫は簡単に返事をしなかった。「面倒くさい」「つけている人に聞いてみたが…」などと言って前向きの方向にはいかなかった。そのうち段々に夫婦の会話が少なくなり、そのことが当然のようになってしまった。大声でしゃべることに私は嫌悪感を抱き、夫に何か相談することすら嫌になってしまった。こうなると毎日の生活もどこか殺伐とならざるを得ないので、小さなもめ事が多くなってしまった。

 

夫も当然このことに気付いていたようで、或る日専門医に耳の検査をしていただきました。その結果は、補聴器をつけた方がよいと言われたようである。さすがの夫もここで決断したようで、早速翌朝開店を待つように、補聴器専門店に出向き細部にわたり調べていただき自分に合ったものを注文してきた。間もなく仕上がってきた補聴器をお店の方にご指導頂き耳にはめた。「どうですか?」「よく聞こえます。」この日から夫と補聴器との付き合いが始まった。

 

慣れない手付きでつけていたのも僅かで、すぐに自分のものになったようである。

 

今年になり、今までの補聴器が聞こえにくくなりお店の方に相談したところ、難聴の程度が進んだということで二台目を新調した。調子は上々で、夫の生活は以前に比べ元気が出たようである。

 

人の話が聞こえ、車の音、風の音、雨の降る音、小鳥の囀り、電話のベルの音等々が何事もないように自然に入ってくる生活の有難さを、今一番味わっているのは夫であるが、妻の私は夫以上に嬉しさを噛みしめている。

 

今年の夏で夫は八十歳の坂を越した。幸い寝込むような病気もないので、これからは体に十分注意し、長生きして欲しい。

 

先日朝の散歩から帰ってきた夫が「お母さん、きょうは蝉の鳴き声をじっくり聞いてきたよ」と嬉しそうに話してくれた。小鳥の声、秋風の音も、聞いてくださいね。

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