「補聴器さん、ありがとう」 長野市 Ｎ.Ｈ様
補聴器を使いはじめて一年になります。おかげ様で、趣味の講演会などに楽しく参加しております。ここまでに至る日を振り返ると種々な事がありました。まずテレビのアナウンサーの話ははっきり聞こえるが、他の人の喋りが聞きづらい。滑舌が悪いからだ。又、会合等で聞きとれないのは、話し手の声が小さいからだと思い込んでいました。ある時娘に忠告されたことがありました。「何度も聞き返されると不愉快だ。お友達にも嫌われてしまうよ。補聴器使ったらー。」私の自尊心は傷つき、しばらく会話が途絶えた事もありました。
私はかなり前からシャーシャーとした耳鳴りがあり、今も続いています。耳鼻科の診断では年相応の状態である。補聴器を使う方法もありますよ、とのことでした。予期してはいたものの、正直いってがっかりしました。眼鏡は日常化しているのに補聴器には馴染めないこだわりが私の中にありましたので、専門店を訪ねることはありませんでした。イヤリングと連動した小さなものがあれば嬉しい等想像を巡らすばかりでした。
その頃でした。短歌会の著名な先生の講話を聞きに行ったのは。生憎席は最後尾でした。願わくば感度のよいマイクでありますよう後ろまで届いて欲しいと祈る思いでした。しかし私の耳には期待はずれでした。周りに目をやるとメモをとる人、頷きながら聞き入る人、その時のショックは忘れられません。情けなくて落伍者のレッテルを貼られたような屈辱感にさいなまれ会場を抜け出しました。そして背中を押されるように向かった先は、長野補聴器センターさんでした。その時、今は亡き師のことばが浮かんだのです。「今度の補聴器は非常に性能がよい、ありがたいことだ。東急の裏の長野補聴器さんだ」と、歓喜して話されたことでした。
縋るおもいで入ったお店は、なんのてらいもなく気楽に話すことが出来ました。そして補聴器を右耳に挿入した状態で説明を聞きました。人づてに聞いたこととは異なり、まず違和感がなく肉声そのままの柔らかさに感動しました。
美しいカラーの小型のものがあることも知りました。私の生活パターンに合ったものとして、強力タイプの小型耳掛型を選んでいただきました。装着、電池の交換、音量調整が簡単にでき、その上ちょっと見には目立たない私のこだわりをクリアーしたものでした。はずれ落ちる心配がないことも実感でき、この日の喜びと安心感は大きなものでした。
現在は老眼鏡をかける要領で手軽に使えるようになりました。置き忘れたり失わないように注意しながら、文明の利器の恩恵に浴し、高齢化社会を明るく前向きに生きたいと願っています。虫の声が、雨垂れのおとが、こんなに美しい響きをもっていたのかと感動の毎日です。補聴器さん、ありがとう。