お客様の声

お客様の声

※個人の感想です。

「音声の窓が開けた」 横須賀市(長野市より転居)K.S様

 

「じいちゃん、テレビの音が大きいね。」

家族によく言われた。聞き違いすることも多く、耳の不自由さを感じたので、耳鼻科へ行き検査の結果補聴器を奨められた。

「補聴器は金属的な音になって聞きづらいものだ」という話を聞いていたので、ならば使いたくないと思った。

台風の嵐の夜、家の者は「よく眠れなかった」と言うのに私は苦にならず、ぐっすり眠った。周りの雑音に惑わされなくていいと、天のじゃくになっていた。

ところが、人の話すとき聞き返すことが多くなった私が、自治会長をやる羽目になった。集会で遠くで話す人の声が聞きとれず、ほとほと閉口した。これはいかんと、補聴器をつけている先輩に助言を求めた。

「性能のいいのを、買うことだね」と言われ、体験談を聞き補聴器センターを紹介してもらった。センターで状態を話し、耳の測定を受け、カタログを見せてもらった。ワァ、高い!決心がつかず資料をもらって帰った。いろいろ思案の末、大奮発を覚悟して耳穴の型を取ってもらった。

数日後、連絡を受けて店へ行き、耳につけた。喜び勇んでの帰り道、自転車に乗ると嵐の中を走るようにゴーゴーと音がする。家に入っても金物工場の中にいるようにかん高い音ばかり。「こりゃあたまらん、こんな物をつけていたら脳みそがイカレテしまう」とはずしてしまった。

その後、説明書を読み返し、店の人が「根気よく調整して慣れることですよ」と言ったのを思い出した。小指の頭ほどのチビなのに、ボリューム調整ができる。場に合わせて使っていると、いつしか金属音が気にならず、対話が億劫でなくなった。

これまで、自分が不自由なだけでなく、家族にも迷惑をかけたことを悟った。

「よしのずいからてんい(天井)をのぞく」孫が隣の部屋で言うのを聞いた私が、「それは“てんじょうを覗く”だろう」と言って意味を話したことから孫たちとの対話が増えた。さらにゲームなどを通して家の中が一層楽しくなった。

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葦の髄から覗くような、もどかしさがなくなりはっきり聞こえるこの快感。狭いトンネルを抜け出て、青空の下、一陣の涼風が吹き抜けたようなさわやかな気分である。補聴器が、今、私の体の一部になった。

家で読書の生活から、知人との交流など出ることが多くなり、世の中が開けた。おかげで生き方が前向きになり、意欲的になったと自分でも思う。

今では、このかわいい文明の利器に、ただ感謝あるのみ。開発してくださった方、ならびに関係の皆様に謹んでお礼を申し上げ、大切に使っていきたい。

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